[ キリムとは ] 絨毯のように毛足がなく、薄い平織りの織物で、様々な遊牧民、村や都市部の住人などによって織られてきました。ちなみにキリム=Kilimとはトルコ語であり、コーカサス地方、イランではGelim、アフガニスタンではKelimと呼ばれています。 全て同じ平織りのものですが、トルコ語のキリムが一般的に普及しているため、現在では 平織りのものを産地に関係なく、総称してキリムと日本では呼ばれています。 |
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[ キリムについて ] 年代 キリムは織り上げられてからの年数により、以下のように呼称が変わります。 セミ・オールド(Semi Old): 製作後20年以上50年未満 オールド(Semi Old): 製作後50年以上100年未満 アンティーク(Antique): 製作後100年以上 種類 キリムには大きく分けて、二つの種類が存在します。ひとつは遊牧民型であり、 他方は工房型のものです。 ◆遊牧民型 遊牧民型のキリムとは、遊牧民が砂漠を移動しながら、遊牧民の妻や子が織り上げた キリムのことです。最大の特徴は販売目的ではなく、家族で使うために織り上げた という点です。販売用のものとは違い利益を優先する必要がなく、自分達の好みに 合わせてデザインしており、個性溢れるものが多くなっています。草木染めを用いたり、 糸自体を手で紡ぐといった温かみのあるものが多く、遊牧民は移動生活をしている関係上、立派な備え付けの織り機ではなく、質素な簡易式のものを使用していました。この簡易式の織り機では幅の広いキリムを織ることが出来ないため、どうしても幅が狭く縦長のものしか織れないのです。横幅のあるキリムが必要な時は、この縦長のキリムをつなぎ合わせて織り上げていました。
◆工房型 工房型のキリムとは、その名の通り工房(メーカー)で織り上げられたキリムのことです。 最大の特徴は、販売目的で製作されている点です。販売目的ですから、売れ筋の柄や色を 多く生産することになり、個性的なものが少なく、同じようなものが多くなってしまいます。また、利益のために生産コストを削る必要性があることから、草木染めではなく、 化学染料染めのものが多くなってしまいます。勿論、工房型のキリムすべてに当てはまるわけではなく、中には素晴らしいものも存在しています。 素材 ◆ウール もっとも普及しており、よく知られている素材です。一般のウールは白ですが、黒や こげ茶色のウールもあります。これは、黒い毛や茶色の毛をまとった羊のもので、一般の 羊に比べて絶対数が極端に少なく、大変貴重な素材となっています。 ◆ヤギ毛 大変希少価値の高い素材となっています。その理由として、ヤギは元々乳を搾るために 飼育されており、毛を刈り取るために飼われている羊に比べて頭数がはるかに少ないため なのです。またヤギの毛はウールに比べて硬い上に、糸を紡ぐにも織るにも困難であることが、もうひとつの理由です。ちなみに触った感触は、ちょうど日本の麻より少し硬い感じとなります。 ◆ラクダ毛 現在ラクダ自体が激減しているため、大変希少価値の高い素材となっています。 激減している理由は、運搬手段がラクダからトラックに取って変わられてしまった ためです。現地でさえもラクダ毛で織られたキリムを見ることは難しく、今や幻の 素材になりつつあります。ヤギ毛同様紡ぎにくいという短所がありますが、保温性に 優れているという長所があり、毛布なども織られています。ちなみにラクダ毛は、体の 部位や育った地域によって色が異なり、非常に明るい茶色から暗い茶色までと様々です。 糸の紡ぎ方 羊毛・ヤギ毛・ラクダ毛などを紡ぐことによって、キリムを織るための糸が出来上がります。この糸を紡ぐ方法には手で紡ぐ方法と機械で紡ぐ方法の二種類があります。 手紡ぎ(Hand Spun) 手で紡いだ場合どうしても均一にならず、一本の糸に太い部分と細い部分が出来てしまいます。この糸の太さのムラが原因で、糸を草木染めした際に色が一定に染まらず色ムラが発生してしまいます。しかし、この色ムラが非常に深い味わいを生み出し、多くのマニアから支持されているのです。この色ムラのことを専門用語で、“アブラッシュ”と呼んでいます。アブラッシュは草木染であることの証明であり、化学染料染めでは決して出せない見事なグラデーションを生み出します。化学染料染めが草木染めの魅力の足元にも及ばないと言われている所以です。
草木染(Natural Dyes) 植物・昆虫・貝殻・鉱石など、自然に存在するものを染料とした染めの技法のことを指します。草木染めの歴史は古く、紀元前25世紀頃には既に用いられていたことが、エジプトの古代の墓を発掘調査した結果から判明しています。 特徴 ・ 色の精製方法は個人が持つ秘伝である ・ 同じ原料、同じ手法を用いても、同じ色が出来上がるわけではない ・ 染めに技量が必要とされる上に、手間が掛かる ・ 後染めの場合、アブラッシュと呼ばれる自然な色のグラデーションが自然発生する ・ 年月を経るにつれて退色し、染めた段階では出せない素晴らしい色合いが生まれる 草木染めは全体的に化学染料に比べて、本質的により柔らかく、また優しい色合いになります。自然の原料を持つ色には、単一の色素だけでなく他の色々な色素が含まれていることがその要因です。例えば自然の赤には青や黄も含まれています。そのため、化学染料のように赤の色素しか持たない赤とは大きく異なってくるのです。 草木染めの素晴らしさは誰もが認めるところであり、昔は草木染のキリムが大半を占めていました。しかし昨今では、草木染のキリムはほとんどなく、化学染料のものが市場を席巻してしまっています。理由としては、化学染料の方が簡単に利用することができ、手間が掛からず、技量を持った人も必要としないため、コストを削減するには打って付けだからです。 ちなみに草木染をする際、自分の好みの色を出すために、神にお祈りの儀式までする人もいるほどですから、草木染は難しくまた尊いものであったと言えます。 技法 触媒染 (Mordant Dyes) 触媒を加える方法で、草木染の大半にこの方法が用いられています。染めの原料自体は水に溶けるのですが、原料に含まれている色素自体は有機物で出来ているため、水に溶けません。触媒にはこの有機物を水に溶かし、色素を色の繊維まで浸透させる効力があるため、用いられているのです。触媒の中でも一般的に知られているものの一つであるミョウバンは、明るい色に仕上げるという効果も持ち合わせています。 建染 (Vat Dyes) 発酵を利用した方法で、藍にこの方法が用いられています。アルカリ性溶液を入れた甕(かめ)の中に藍を入れ密封し、熟成させることで染める方法ですが、注意すべきはこの溶液に漬けただけで青く染まるのではないという点です。糸は一旦溶液から取り出した後、空気に触れさせることで初めて青く染まるのです。 直接染 (Direct Dyes) その名のとおり、触媒を一切用いず繊維を直接染める方法です。クルミの葉や殻を原料とする際、この方法が用いられます。 原料
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